恋人から、〈君はオレのもの〉〈あなたは私のものよ!〉と言われて、〈ああ、これで、安心!〉と思い、喜ぶ人もいると思うけど、どうなんでしょ。ほんとに喜んでいいんでしょうか。この〈オレのもの〉〈私のもの〉という表現にはポジティブな面と、ネガティブな面との二つがあると、私は思うんです。これをポジティブな意味で言う人は、〈あなたを私のものとして大事にし、他の人には渡せない〉といった責任感の表現として言っているのでしょう。その一方、〈あなたはもう自分に所属するのだから、自分だけを愛さなければならない〉といった、相手を拘束する意味で言う人もいるでしょう。そういう表現を使うほうも、聞くほうも、ポジティブに使い、ポジティブなものとして感じているのならいいんですけど、ネガティブな意味で使われたり、感じられるのであれば問題です。というのは、相手を自分のものと考えることから、相手の人格を無視したり、個人の尊厳を犯すことを平気で言ったり、したりしてしまうという過ちを犯すことがよくあるからです。そういう相手と結婚してしまうと、その相手はきっとわがままになるとみて間違いないでしょう。また、甘えるんじゃないでしょうか。それに、そもそも結婚というものは相手を拘束するものじゃないでしょう。ほんとうの愛は、愛する者を独占したり、拘束するものではなく、相手を自由にする、相手の自由や主体性を尊重するものではないでしょうか。自分の自由な意思によって、相手を愛することができてこそ、その二人の関係は信頼によって深められ、強められるものでしょう。ところで、〈君はオレのもの〉〈あなたは私のもの〉という表現を、使うほうがネガティブな意味で言っているのに、それを聞くほうがポジティブな意味に受けとめてしまうということがあります。もちろん、相手の真意は、言葉だけでなく、相手の日常の態度によって判断できますよね。また、そうしたほうがいいんじゃないですか。たったひと言の〈もう君はオレのもの〉〈あなたは私のもの〉という言葉に酔ってしまうといった過ちは犯さないほうがよろしいのです。ついでに申しますが、言葉というものはくせ者です。言葉を使う人の真意を理解することなしに言葉だけが先行してしまうから、言葉だけを信じてしまうから、誤解や曲解とか、思い込みで錯覚してしまうということがあるんですよ。恋におちていると、思い込みで相手の本心や真意を見損なうということがよくあるので、その点、特にご注意を!