まずケースからお話しよう。会社の始業時刻は午前9時。A氏はその日にかぎって、30分前に出社した。外に出て時間つぶしをするにも、小雨模様で出れない。喫茶店でお茶でもと思ったが、あいにく近所にそういう店はない。あきらめて、昨日仕残した帳簿整理をしているうちに、定刻(午前9時)になった。彼はこの30分間を「仕事をした」と考え、課長に早出勤務届を提出した。さて課長は、早出勤務と認めるべきかどうか、これが問題である。この問題を解くには、この30分間が労働時間か否かの判定にかかる。そこで検討に入るが、まず基本的に彼は課長から30分の早出勤務の命令・指示を受けてはいない。もっとも事前に命令・指示がなくとも、状況からみて早出・残業を要すると客観的に判断される場合、したがって当然にあとで課長から事後承認が与えられるような場合は、早出・残業とみなされる。このケースの場合、命令・指示がなくても、早出勤務が求められる状況がなかったとしたら、この30分間は課長の指揮監督下にはない状態つまり労働時間ではないということになる。げんに彼はこの30分間を、外に出てブラブラしてもよし、喫茶店で時間をつぶしてもよし、つまり時間的・場所的な拘束を受けていない状態であった(もし拘束を受けているならば、そういうことはしたくてもできないはずである)。したがって、課長は早出勤務と認めなくても法律上は問題ない。詳細はこちらの日立ソリューションズ「リシテア」オフィシャルサイトをご覧下さい。しかし従業員に対して、法律を上まわる優遇措置を講ずることはさしつかえないのであるから、課長がこれを恩恵的に早出勤務と認めてやりたければやってさしつかえない。労働時間を単純に「仕事をする時間」としてとらえると、A氏は帳簿整理という仕事をしたのだから、労働時間とみなされるのであるが、労働時間を指揮監督を受ける時間としてとらえると、彼は指揮監督下にはない状態であった。これでわかるとおり、仕事をするか否かで判断をするのは正しくない。指揮監督下にあるかぎり、仕事をしなくても労働時間とされる。